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演歌について [作品考察]

今年の『トーチカ!』で発表する作品をつくりはじめています。

テーマみたいなのは、すでに夏ごろから心に浮かんでいるのですが
・・・えっと、なんというか、“演歌”にしようかと(笑)。

みなさんにとって“演歌”って、どんなイメージなんだろう。
私の子供のころのイメージは最悪とも思えるものだった気がします。
どうしてそんなに耐え忍んでいるんだろう、とか
不幸ならやめときゃいいのに、とか
演歌的世界を全否定するような心持で
テレビの演歌特集などを疎ましくみていました(苦笑)。
さほどポジティブな子供でもなかったけど、
演歌の中にみられる“忍”の世界がキライでした。

今年に入ってなぜ突然“演歌”に興味が湧いたのか、
本人にもあまりわからないのですが
これまで朗読する影としての活動で取ってきた
“影を光の元へ連れ出す”というスタンスが
ちょっと変化したんだな、と理解しています。

コロナ禍で家から出られない生活を送ってみて、
否応なしにこれまでとは異なる断絶感や孤独感に想いを馳せました。
そんなとき、ふと音楽配信サービスのランダム再生で聞こえてきた演歌の曲が
気持ちに刺さりました。

さみしい、でも耐えなきゃね・・・
会いたい、こんなに愛してるのに・・・
あああ、私って不幸なのね・・・

要約するとこんな感じ(笑)。

と、同時に思い出したのがフランシス・プーランク作曲の
全一幕のオペラ『人間の声』という作品。
これは、モノオペラとも呼ばれるソプラノ歌手がたったひとりしか登場しない作品で、
電話越しに愛する男の心を失っていく自分に絶望。
ラストでは電話コードを首に巻いて狂気のうちに死んでいくという作品
(ジャン・コクトーの同名の戯曲が原作)。

モノオペラと演歌・・・なぜか少し似ている気がして、
だけど圧倒的に違うのは演歌にはなんだか逞しさがあるということでした。
悲惨な感じなのに、不幸だってずっと言ってるのに(笑)、
それで死なずに生きてるよ、みたいなところ。
芸術性と大衆性という違いなんだと言ってしまえばそれまでだけど。


リモートワークで家にいて、
街も閑散としたり奇妙なビニールカーテンや透明パーティションに隔てられたり、
だけどそれは自分だけが耐えてる状況でもない。
さみしいとか、不安だとか、もういやだ、会いたい、出たい、話したい・・・
そんなことを叫びたくなる日々で、
いやいや、もしかしたら演歌的な世界観で突き抜ければ、
私の感じてる孤独とか人恋しさとか、罪なく表現できるかも知れない・・・
そんなことを考えました。
モノオペラ的に自分だけの闇の淵へと転がり落ちるのではなく、
堂々とさみしさを口にしながら罪深くはない孤独の叫びを舞台にのせる。

きっと、なんのこっちゃって思いますよね(笑)?!
でも、これはみて頂いた方がきっとわかりやすい。
『ああ、そういうことね』って笑ってもらえる。

今年の影は、
パーソナルな孤独と恋慕を鎮めるお焚き上げに演歌の香りをまとわせつつ・・・。

こんな状況で開催当日まで何が起こるかは予測不可能だけど、
また新しい朗読する影をお見せできると思います。

どうぞ、お楽しみに!

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