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幻想夜話/22 [過去の創作ノートから]

ある時読んだ幻想的な童話の1シーンや、
子供のころに聞いた昔ばなしのモチーフや
浮かんでくる奇妙なイメージなどなどを
むやみやたらと縫い合わせたような、
奇妙な物語ですね(苦笑)。

+++

 父さん、あたしね、月に行ったことあるの。
 ずっとないしょにしてて、本当にごめんね。

 ある朝のこと。
 玄関のドアを開けたら、そこが月面だった。
 どうしようもなかったの。
 

 ピクニック用のバスケットに
 レモンと
 ザリガニと
 役に立たないクマの縫いぐるみ。

 引力なんて知らない。


 父さん、あたしね、海を見たことがないの。
 だって塩辛い水に覆われた水のカタマリなんて信じられない。

 ある夜だった。
 ベッドに身を投げたら、あなたはもう死んだと言われたの。
 そんなの、きっとウソだと思ったわ。

 
 ザリガニがね、あたしのスカートを短くするの。
 レモンが白い月になって。
 クマは
 何の役にもたちやしない。
 

 父さん、思い出は尽きない。
 窓辺に立つと
 あなたを想う。
 父さん、大好きだよ。

 ずーーとずーーーと、長生きしてね。
 あたしと、この役たたずのクマのために。


 
 これからあたし、ピクニックに行くわ。



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