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素直じゃない。 [作品考察]

雨月物語の中で『浅茅が宿』の冒頭は
 下総国 葛飾 郡真間の郷に勝四郎という男がいた・・・

『夢応の鯉魚』では
 延長の頃、三井寺に興義という層がいた・・・

『青頭巾』では
 昔、快庵禅師という徳の高い層がいた・・・

というように冒頭部分がはじまっている。
これって物語の中に登場する人物というより、第三者の視点なんだろうなと思う。
過去に起きた出来事を知っている誰かが、読者に向けて語りかけているという感じ。

朗読をするときの基本は、
きっと素直にこの流れに従って読み上げていくと思うんだけど、
それだと少し詰まらないような気がしてしまう(苦笑)。

例えば『青頭巾』なら、
快庵禅師にやっつけられたと思われている鬼と化した僧の妄執が蘇って
実は素知らぬ顔で物語を語って聞かせているという構図だったら
おもしろいんじゃないかな。
第3者じゃないから、ところどころ読み方が冷静じゃなくなる。
愛した稚児が亡くなるシーンでは涙ぐんだり
自分がやっつけられる表現のところでは激高したり・・・。
朗読を聞いている人はきっと奇妙な感じがしてすごく違和感を持つはず。
だけど、最後に妄執が朗読していたってわかったら「ああ、そうだったんだー」って。
そういう違和感と腹落ち感とがあるとおもしろいんじゃないか。


・・・どうにも素直じゃない私。
さてさて、どんな風に読もうかしらね(笑)。




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