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幻想夜話:14 [過去の創作ノートから]

過去のテキストを振り返ると、そっと過去の自分を抱きしめてあげたくなる衝動に駆られます(笑)。
幻想夜話のシリーズを書いていた頃の私は、月夜のような時間に生きている。
テキストから感じるのは蒼白い世界に、ほんの少し漂う淡いイエロー。

今では、こんな世界を描くことは出来ませんが
人はこんな風に人生の時間を積み重ねながら、色取りを変えていくのでしょうか。
・・・ん?まるでピカソの“青の時代”みたい。
もちろん、彼と比べるまでもないのですが(笑)。

+++++++

 僕は、竜を1匹飼ってる。
 夜中になると、僕の背中にツメをかけて這い上がり
 窓から出て行ってしまう困ったヤツ。

 
 ある夜、僕はいつものことながら
 ヤツのツメのかかり具合がどうにも痛くて
 目が覚めてしまった。

 ・・・背中に、すぅっと血が流れていくのを感じた。



 真夜中の戸外は
 月灯りで満たされて
 ヤツが羽ばたいていった翼の音だけが響いてる。



 「ねえ、お前。も少し、ツメをかけるのを工夫しておくれよ。そうじゃなきゃ、僕はすっかり寝不足になってしまうから。」

 竜は退屈そうにアクビをして、僕の話を聞いているのかいないのか。僕はさっきより声を大きくして、も1度言った。

 「ツメ、剝してしまおうか?」



 竜はその夜から、出かけなくなってしまった。
 開け放たれた窓からは月灯りばかりが差し込んで
 僕と竜は眠れなかった。
 ずっとずっと眠れずに
 言葉も交わさず
 ただじっと朝が来るのを待つようになっていた。



 誰が悪いの?
 ううん、誰も何も悪くはないさ。
 窓を壊してしまえば
 空への夢も
 見なくなるよ。


 眠れない夜が明けると
 僕は竜のためにひとりの女の子を呼んで来て
 子守唄を歌って欲しいと
 頼んでやった。
 
 これで、ヤツもきっと眠れるだろう。
 ・・・僕は、街へ出て行こう。
 
+++++++
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