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幻想夜話:25 [過去の創作ノートから]

ある作品にふれて、ふとインスピレーションを得る・・・
そんなことって、ありますよね。

今回ご紹介するのは、そんなパターンのようです。
へー、こんな感性してたんだ・・・やっぱり壊れてたっぽいね(笑)。
+++

赤い坂を登りきったところに
今宵の宿がある。
 
…計画の実行地
もしくは、僕が狂っているということを示す場所。



小さな賭けをしていた。
幻想が成就することを夢見ながらも
その願いが叶ったら、僕はいったいどうなるのかと問いながら。

絶望的な空白と
断絶的な未来とが
坂道を上がる2本の脚を重くして
だけど、行くしかないと決意させる。



チェックインをすませたら、ロビーのソファに腰かける。
さあ、ここで待つのだ。
彼女が来る…はずだから。

夕闇が落ちてくる通り、赤くにじむテールランプの群れ。
もう2時間待った。
…やはり、僕は間違っていたのか。
約束もしない人が来るはずもない。
いや、それどころか。
存在するかどうか分からぬ人を待ち、
愛していると告白しようと待っているなんて
きっと狂ってる。
理想の人を求める旅の果て。


でも、笑わないで。
この世界では
狂っている人間だけが生き延びるのだから。



部屋に戻り、シャワーを浴びた。
大都会の深夜。
喧噪なんてありはしない。ここは何て静かなのだろう。

見知らぬホテルのロビーで、やって来た彼女に愛を告白し
ともに消えてしまおうという僕の計画は
やはりただの幻想として潰えるのだろうか。
理想の人など、この世界には存在しなかったのか…。



“コンコン”と、ドアを叩く音がする。
扉の向こうにいるのは君なのかい?
愛しのドルネシア。
ようやく君はこの世界に降りてきたのかい?
ならば、どうか僕を抱きしめて。
正気に戻れば
決して生きてはいけないこの世界で
君といられたら
僕はずっと生きていけるのだから。




赤い坂を登りきったホテルの部屋で
狂気を満たす夜。




+++


バレエのドン・キホーテについて、レビューを2本書かねばならないのですが、ちょっと発想を広げたくて。
原作を読んだことはないのですが、この幻想夜話はドン・キホーテから想起して書いてみました。

…ヘンでしょう(笑)?

ドン・キホーテはスペインの老紳士が勇者の物語を読んで、自分もすっかりその気になって冒険に出かけるというお話ですね。

いろんな解釈があるそうですが、当時の人たちはそんな老紳士を嘲笑の的にしたそうです。そして、興味深いのは風車に向かっていく老紳士は狂っていながらも生きているのに、正気に戻ったら死んでしまったというところ。これは、狂っていることで他者を攻撃しながら生き、正気に戻れば死ぬしかないような世相を批判的に描いたとも言われています。 


こういったエッセンスを取り出して、かつ先週末に泊まった赤坂のホテルからイメージを起こして書いてみたんですけどね…。

理想の人が待っているという幻想に取りつかれた男の物語。
でも、彼がキホーテと違うのは、自分がオカシイということを自覚しているという点。
キホーテの時代では死を意味した狂気を、現代に生きる彼は逆に己を生かすための装置として利用するのです。

そうでもしなければ、生きてはいけないほど熾烈な世の中だから…。


うーん。
書ききれたかなぁ(苦笑)。
ま、ちょっとしたパロディになってくれれば、いいんですけどねー。


ちなみに、ドルネシアとは、キホーテが理想とした女性の名前です。。


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